ポン酒倶楽部

日本全国にある地元の人が愛する日本酒やワイン・ビールをご紹介します。有名無名を問わず美味しいお酒をぜひ、飲んでください。

生酛や山廃って何?特別な造り方なんですか?

 さっそくですが、生酛や山廃って聞いたことありますか?

 

生酛?山廃?これって何ですか?ちなみに何て読むの?

これで「きもと」「やまはい」って読むんです。

 

日本酒って多くの用語があってすごく分かりにくいですよね。
この2つも日本酒を仕込む方法の用語なんです。

 

ちなみに生酛(きもと)や山廃(やまはい)って日本酒臭くて飲みにくいって聞いたことありませんか?

めちゃめちゃ独特な香りがして日本酒が苦手になりました・・・って声をよく聞くんですよね!

 

生酛・山廃を最初に飲むのは個人的におすすめしていません!

 

えっ!?それって美味しくないってこと?

 

いえいえ!生酛・山廃はハマると美味しいんですが、好みが分かれやすいタイプの日本酒なんです。

 

日本酒はどうしても趣味嗜好品ですので、好みが分かれてしまうのは当たり前です!

ただ、日本酒の造り方の違いや種類を知ることで、自分の好みを見つけることができるようになるんです。

 

生酛・山廃とは何かを知っていただいて、新たな日本酒に挑戦するお力になればと思っています!

 

それではさっそく、生酛や山廃とはなにか?を見ていきましょう。

簡単にまとめてありますので、ぜひ、最後までお付き合いください。

 

 

「記事全体像・もくじ」

 

 

 生酛・山廃のまえに「酒母」って知ってる?

 

お酒の母と書いてあるように日本酒を造るうえでとても重要な工程の一つです。

お酒の母と書いて酒母(しゅぼ)と読みます。

 

酒母はアルコールを生成する元気な酵母を大量に純粋培養する工程のことです。

この工程はとても重要であるため、多くの酒蔵では「酒母室」という独立した専用の部屋を設けています。

 

酒母室では酵母を純粋培養することから土足厳禁であり、水溜りができす、乾燥した場所でなくてはなりません。

酒造りを指示する杜氏は非常に酒母室には気を使っており、非常に清潔に保つ努力をしております。

毎日、床の水拭きや掃除をし、また、外部からのホコリなどが入らないように細心の注意をしています。

 

酒母がとても大事なことは分かったけど、生酛や山廃と関係があるの?

 

関係あるんです!生酛や山廃は酒母を製造する方法のことなんです。

 

・2種類ある酒母の製造方法

酒母の製造方法には代表的な2種類があります。

2種類の製造の違いの大きなポイントが「乳酸」です。

 

自然に乳酸菌から乳酸を発生させる「生酛系酒母と乳酸を添加する「速醸系酒母に大きく分かれます。

 

ではまず、生酛・山廃のまえに多くの日本酒に使われる速醸系酒母から見ていきましょう!

 

・速醸って?これもなんて読むの?

 

まず、はじめに速醸(そくじょう)と読みます。

現在、市場に流通している日本酒の多くが速醸系酒母で出来ています。

 

それではなぜ、速醸系酒母で製造された日本酒が多いのでしょうか?

その理由が乳酸を添加できることにあります。

 

酒母の製造で一番、気をつけなくてはならないのが雑菌の繁殖を防ぐことにあります。

酒母に乳酸を添加することで酒母自体が雑菌が繁殖しずらい乳酸酸性となり、優れた酵母だけを純粋に大量培養できるようになる非常に安全な方法なのです。

 

優良な酵母を安全に培養できることから現在、もっとも主流の方法として採用されているのです。

 

速醸系酒母と生酛系酒母の関係性

 

速醸系酒母は乳酸を添加することで安全に酵母の培養を行う手法でしたが、生酛系酒母とはどのように製造する方法なのでしょうか?

 

まずはじめに生酛系酒母には2つの代表的な製造方法があります。

では、生酛系酒母の代表的な製造方法が生まれた時代から見ていきましょう

 

・生酛系酒母はいつできた?

生酛系酒母が誕生して確立したのが江戸初期になります。

 

日本酒の歴史ってやっぱりすごいですね!

 

江戸初期に基本的な方法として確立されたのが「生酛」、その後、明治に入り、生酛を進化させて確立したのが「山廃酛」

この2つが生酛系酒母の代表です。

 

・速醸系酒母とどこが違うのか?

速醸系酒母と何が違うのか気になりますよね

 

一般に速醸系酒母は市販にて販売されている醸造用の乳酸を添加して製造します。

 

生酛系酒母の場合は乳酸を添加するのではなく、乳酸菌など自然界にいる微生物の力を借りて製造する方法なのです。

 

つまり、人工的に乳酸を添加するのではないので、手間や時間がかかり、また、安定性を確保するのが非常に難しい手法といえます。

 

ただ、自然界の微生物の力を借りて造るので、酵母の生存率が高く、さらには高いアルコールにも負けない強靭な強さを持って生まれてきます。

 

酵母が非常に強靭で発酵力が強いため、そのパワーは日本酒にも反映され、日本酒が濃厚であり非常に奥深い味わいとなります。

 

生酛と山廃酛の違いは

 

速醸系と生酛系の酒母の違いは分かったけど、生酛と山廃酛の違いはあるの?

 

生酛と山廃酛の違いは効率化がポイントになるのです。

 

・生酛って

まずは生酛についてみていきましょう。

生酛で重要になるのが山卸(やまおろし)です。

 

生酛造りでポイントとなる山卸は浅い桶に蒸米と麹を入れて、ヘラなどで混ぜ合わせる作業です。

さらに水を加え混ぜ続けるのですが、この作業がとても重労働となります。

一度だけでなく、何度も同じように混ぜ合わせる作業を続けなくてはならず、また2〜3人が人組みとなり、同作業をするので人手も多くかかります。

 

ただ、この山卸をすることで麹の酵素作用が強く働き、より一層の糖化が進み、微生物の栄養源が多く作られます。

 

生酛で重要になる作業が山卸ですが、非常に時間や手間、人手が多くかかってしまうデメリットもあります。

 

・山廃酛って

 

生酛では重労働な作業である山卸がありましたが、より効率的で手間や人手を少なくし、生酛に負けない骨太な日本酒を造るために新たに発明されたのが「山廃酛」です。

 

山廃酛は山卸を廃止した製造方法です。山卸を廃止することで、重労働を無くし、効率的に骨太な日本酒を造ることができるようになりました。

 

山廃酛では山卸の代わりに水麹(みずこうじ)」と呼ばれる酒母の生育方法を行うことで山卸と同様の効果を生み出せることが実験により明らかとなりました。

 

この水麹で造った酒母と山卸にて造った酒母とでは成分に違いがないことから実用化されました。

 

速醸系酒母と生酛系酒母のシェアは

 

江戸時代に生まれた生酛系酒母の製造方法も現代では更なる進化を遂げてきています。

 

今もなお、伝統の製造方法を守る酒蔵もありますが、若手の杜氏が従来の生酛や山廃とは違う香りを出すなど、新たな進化に取り組む酒蔵が目立ちつつあります。

 

ただ、全体のシェアをみてみると速醸系酒母が90%を占めており、山廃酛が9%、生酛が1%と、まだまだシェア比率は低いのが現状です。

 

シェアが速醸系のほうが高いけど、やっぱり速醸系がいいの?

 

そんなことはないですよ!でも日本酒を初めて挑戦する場合は速醸系がオススメ!

 

生酛系酒母を用いた日本酒、生酛や山廃酛は特有の香りが印象的です。

 

強靭な乳酸菌から生まれた日本酒ですので、どうしても乳酸系の香りや、芳醇で熟した香りがありますので、日本酒臭く感じることがあります。

 

速醸系酒母を用いた日本酒は香りが華やかなタイプが多いので、初めて日本酒を挑戦する場合は速醸系で香りが華やかな酵母を使用した吟醸系がオススメになります。

 

まとめ

 

好き嫌いが生酛系酒母では分かれてしまいますが、日本酒に少しづつ慣れてきた方にはぜひ、挑戦してもらいたいのが、生酛・山廃酛ですね。

 

日本酒には様々なタイプがありますので、好みの日本酒を探してみてください!